--------------------
公衆衞生の旅
齊藤 潔
pp.162-164
発行日 1951年3月15日
Published Date 1951/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200800
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
滯來80日間の旅行で,アメリカの公衆衞生の最近の事情を見聞する機會を得たのでこゝに報告する。こちらで雜誌や書物で見たり,多くのアメリカ人に逢つて聞いたりしたが,百聞は一見にしかずという古い諺を,こんなに現實に經驗したことはない。それというのも,ある廣い國で,各州は殆んど獨立國であるから,どの分野でもこれがアメリカ式であるというものをつかむことはむずかし。アメリカについて見るものも,聞くことも,いづれも正しいのだが,どれも全體のほんの部分に過ぎないことがある。そこでこゝに報告する筆者の見聞も,現實に見たもの,聞いたことを中心として,できるだけ誤りなくお傳えし,その判斷は讀者緒賢におまかせすることにする。
筆者は2昔前に,ボストシ市のハーバード大學で公衆衞生學を學び,1920年代のアメリカの公衆衞生に接したことがある。當時を振り返つて見ると,20世紀の第1の4半紀に於て成し遂げた急性傳染病や結核などの疾病予防事業の成果,環境衞生や食品衞生の改善,乳幼兒死亡率の低減など赫々たる業績をまのあたり見聞した。又,當時漸く起りつゝあつた衛生學の補習教育,專門教育並に專門技術者の養成については身をもつて體驗した。
Copyright © 1951, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.