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結核檢診におけるツベルクリン皮内反應に關する二,三の問題について
川村 達
1
1國立公衆衞生院
pp.23-28
発行日 1952年10月15日
Published Date 1952/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201115
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どんな仕事にも必ずある樣に,結核の集團検診も,之を繰返していると,極めてあたり前に實施されている基本的なことの中に實に多くの問題なり疑問なりが轉がつていることに氣が付く。著者も結核研究の一つの手段として,色々の目的に從つた集團検診をくり返して來た者の1人であるが,こう云つた問題なり疑問なりの中には,初めの目的より一層深い興味をそゝられる樣なものが少くない。ツ反應陰性者に同時に同一量の同一BCGワクチンを接種しても,以後に示すBCGによるツベルクリン(以下ツ)反應の強さには非常に大きな個人差があると云う事實から,結核に於ける遺傳學的な素因をある程度客觀的に認識出來る方法を見出したのは著者の持つ1例である。1)2)3)
この樣に,日常遭遇する事柄を,著者は著者なりに把え,考え,何らかの形で解決し,又は止むを得ず妥協し,或いは尚更に迷いつゝある譯であるが,保健所をはじめ各方面で検診に從事しておられる方々も恐らくは同樣であろうと思う。近年の我國に於ける如く,結核検診が津々浦々に勵行される状態になると,こうした大きな筋道の外に現在はおかれている事柄も,案外に大きな影響をもつことになるし,検診そのものが正しく行なわれているか否かにさえ關係して來ることがあると思う。そうなると,それ等の問題も個々の醫師の一人よがりや自己流で片附けられるべきものではなく,客觀的に正しい筋道がつけられなければならない。
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