研究報告
"中學生の蛔虫卵保有率と學業成績その他との關係について"
岩永 知勝
1
,
渡邊 嶺男
1
,
福原 照明
1
1廣島醫科大學公衆衞生學教室
pp.46-48
発行日 1952年5月15日
Published Date 1952/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201043
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我國に於ける戰後の腸内寄生虫卵保有率は驚くべき數字に達し,中でも蛔虫卵保有率が第一位を占めて居ることは周知の事實である。
從來,虫卵検索や集團驅虫により蛔虫の影響に關する問題は各方面から検討され,對策が構ぜられてきたが,蛔虫卵保有率が就學期の兒童,生徒の身體の發育,體力及び智能に何らかの影響をあたえるのではないかという事についても諸家の報告が枚擧に遑なく,影饗の有無については賛否兩論相半ばして居る。森下1)は此の問題は蛔虫寄生以外の種々な條件に關連して居るので,それらを取り除き單純な蛔虫寄生のみを唯一の條件とすることが困難なためその結論は簡單に下せないといつている。智能に對する蛔虫の影響が認められなかつたとするものは,大井,高野瀨2),玉3),佐々木4),丹羽5)等であり,これに反し成績上位のものには蛔虫の寄生が少いという結果をみたものは柳澤6),齊藤,檜山,永峯7),横川,分島8)等である。又蛔寄生が年齢的に,或は性別により差があるかどうかという問題も簡單なものではなく,感染に影響する種々の因子が存在するから一概には片附けられない。然し諸家の研究によると,大體我國に於ては乳幼兒を除き,生活環境とか,生活樣式によつで蛔虫感染率には大差がない樣に思われる。今回,著者等は呈市内某中學校生徒を對象として,標本調査により蛔虫寄生率と學業成績,年齡,性との關係を觀察したので報告する。
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