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ヴイルス病の豫防と治療
宮川 米次
1,2
1生物理化學研究所
2東生病院
pp.155-161
発行日 1951年3月15日
Published Date 1951/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200799
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緒言
最近の研究はヴイルス病の種類の如何にも多いことを瞭らかにしたし,これがますます多くなることを示して居る。動植物界を通じて400種以上にも及び,それが人間界に於ても極めて重要なものとなり,細菌性傳染病のそれにまさるとも,劣ることのない重要さを占めてきた。今までは超顯微鏡的のもので,見えないものとして,片付けてきたが,電子顯微鏡によつて,判然と正體をつかむことが出來るようになつた。ただ光學的光線によるか,電子的電力によつて見るかの差あるのみである,前者ば主として肉眼で見るが,後者はもつぱら寫眞像として見るの差はある,勿論後者と雖も肉眼で見えないことはない。今日電子顯微鏡の力を借りると,ヴイルスのあらゆるものが,判然と見ることが出來るようになつた,1mμ前後のものが,明視することが出るようになつた,或はそれ以下のものでも,判然とすることは疑を容れる餘地がない。彼のフアージの如きが,或は酵素と言い,或はヴイルスといい,判然としなかつたのが,電子顯微鏡の力によつて精子形のもので立派にヴイルスの一種であり,それが當該細菌に食い込んでいつて終にこれを溶解し盡すことも,鏡下に於て明視することが出來るに至つた。かかる點はペニモシリンが,當該細菌に甥する態度とはかなり相違があつて,まことに面白い,然しかかることが判然とした今日は,再びフアージを治療界に使用するというように企てられるのではないかと思われてならない。
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