特集 性病
アメリカの性病豫防
中原 龍之助
1
1厚生省防疫課
pp.585-590
発行日 1952年11月10日
Published Date 1952/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200844
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アメリカの性病豫防活動の歴史は比較的新しく,スカンヂナビヤ諸國が170年から180年の歴史をもつのとは比較にならない。近代的な豫防對策が確立したのがこゝ10數年間のことである。即ち何等か對策らしい對策がとられたのが1918年であつて,第一次世界大戰で壮丁に性病の多いのに驚いた結果何とかしなくてはと始つた。しかし性病が一般人にとつていまわしい病氣と考えられているところから,いつとはなく氣抜けがして,政府のとつている對策は僅かに研究の補助を出してお茶をにごす位になつてしまつた。一部の識者がこの状態を憂えてはいたが何ともならす衰微の一途をたどつたが,トーマス・パラン等がスカンヂナビヤ諸國の性病對策を研究し,現状を何とか打開せんものと苦心し,世に問うた一文が深く世人の共鳴を得て,始めて近代的對策が串來上つたのである。この時が1936—1938年である。從つて豫防對策については大體スカンヂナビヤ諸國の對策を眞似ているが終戰後日本はアメリカの指導によつて性病豫防を行つて來た關係上,日本で現在とられている對策と略同じようなものと思つて大した違いはない。
しかし,やり方は似ているが,貧乏な日本との違いは,けたはづれに大仕掛け,且つ徹底的である點である。日本の人は往々,アメリカの眞似をしたつて日本にはあてはまらないと云うが,アメリカはイギリスとスカンヂナビヤ諸國とのやり方を比較研究し,結果において最もよい成績を示している。
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