特集 第4回日本公衆衞生學會
特別講演
衞生教育の科學的基礎
楠本 正康
1
1厚生省公衆衞生局保健所課
pp.78-87
発行日 1951年1月15日
Published Date 1951/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200769
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公衆衞生の仕事が國民の理解と協力がなくては殆ど効果を擧げることができないことは申すまでもないのでありまして,1873年の昔公衆衞生の父といわれておりますエリス博士は,「これからのアメリカの公衆衞生が十分な成果を收めうるか否かは一に國民の衞生に關する理解如何にかかつている」といつているのであります。また有名なヘルマンビツク氏は公衆衞生の發達は一にも二にも三にも四にも衞生教育であるということをいつています。このような點は皆樣よく御承知のことでありますが,勿論これらの例をひくまでもなく,我が國におきまして衞生教育の必要なことは,衞生思想の普及の名におきましてすでに明治大正の頃から強調されてまいつております。しかも民主的方式で行いまする衞生行政の展開に當りまして一層この衞生教育の重要性が加わつてまいつたのであります。しかしながら,今ふり返つて衞生教育の仕事のあとをみまするとこの2,30年の間,その見方につきましても,或はその考え方につきましても何等の進歩も認めえないのであります。從いまして十分な實績を收めていないといつても過言でないのであります。ところがこの間にありまして他の衞生部門は各同僚,先輩の御盡力によりまして目覺ましい進歩發展を遂げているのであります。この間にあつて衞生教育だけがいわばマンネリズムに陷つて,ただ獨り取殘された形となつているのであります。
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