隨感隨想
公衆衞生學と近代精密標本論
富士 山
1
1神奈川縣勞働衞生協會
pp.43-44
発行日 1950年7月15日
Published Date 1950/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200683
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公衆衞生學が最も其實用性を發揮している領域の一に産業醫學,廣い意味の勞働衞生がある。公衆衞生學的活動の半ば以上は産業界においてその實現が期せられているともいえる,勿論産業界以外にも公衆衞生學は廣く活用されているが,個々人からなる社會大衆に對してよりも産業場,學校等廣く云えば勞働基準法適用産業場を一單位としての公衆衞生學の廣用は實現性にも利用性にも希望のもてるものであろう。敗戰後一時どん底に陷つた産業界も今や復興の途をたどつているのは喜ばしい,産業衞生の興隆をはなれて産業界の眞の復興をのぞむことは考えられない,この意味で1昨々年11月から實施されている勞働基準法は働く者のための憲法であると同時にその細則にあげられている衞生管理者の制度はどれも産業衞生の進展に役立つものでなければならない。
現在我國の産業醫學の實際的方面が府縣單位で進んでいるのは産業界が勞働基準法と離れられないものであり,勞働基準法の法的威力は勞働基準局を通じて發揮されるところから見て最も自然な成り行きであろう。各府縣には夫々衞生管理者協會があり活動の大小こそあれ勞働衞生に精進している筈である,それで我國の産業衞生,勞働衞生の状況は各府縣單位にながめるのが自然的と解される。府縣を單位とした産業衞生の大觀をつかみとるべきである。公衆衞生の問題も我々の考えるところでは現在は抽象的議論の道程はすでに止揚すべきところまできていると思う。
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