隨感隨想
KamalaとAmara
高野 六郞
1
1北里研究所
pp.42-43
発行日 1950年7月15日
Published Date 1950/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200682
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カマラとアマラは童話の假構人物ではなく,存在した印度人の女兒だということである。それは狼の子になつて,狼の家族の一員として養育された人間の子の名前だと近頃よんだ英國の醫學雜誌にかいてある。もつともこの話はかなり古いできごとである。
インドのベンガルの中部ナパールの孤兒院の牧師J.A.Singhが,山で狼狩りをしたさい生捕つた奇怪な動物を正しい人間と認め,それを人間の社會へ連れもどして教養を加えながら,心理的發展を精細に觀察して記録したのがHistory ofthe life Kamalaという本なのである。ただし氏の本の著者はArnold Gesellという作者だから,或は事實らしくかいたフイクションかも知れない。しかも筆者はこの物語の抄録を讀んだだけなのだから,敢えて之を實話だと保證するわけではない。ただ實話とすれば面白い條件である。
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