論説
Influenza Pandemic
野邊地 慶三
pp.249-250
発行日 1949年3月25日
Published Date 1949/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200433
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昭和7-10年(1918-20)の前回のインフルエンザ世界流行は我國に於ては39萬餘,又インドに於ては5百餘萬の生命を奪ひ,更に全世界の犠牲は20億に及んだものと推定されて居る。インフルエンザは30年内外の週期を以て去來するものと考えられて居るが前流行(1917)以來既に30餘年を經て居るのと,世界戰爭下不良生活條件により民衆の抵抗力が減弱して居るので,ここ數年來インフルエンザの世界的大流行の襲來がおそれられて來かものである。この時に當り果然本病がイタリヤに勃發し,その流行が隣接諸國に波及して居ると報ぜられたので衞生當局は大いに緊張させられて居るのである。尤も本流行は良性であつて致命率が低いとのことである。
この流行は果して世界的大流行の起始であるか,或は時々見られる比較的大規模な地域的流行に過ぎないか未だ不明である。インフルエンザの世界的流行の週期は30年内外であると考へられたのは前2回の世界的流行(1889及び1917)の間隔が約30年であつたからなのである。然しながらそれ以前の本病の世界的流行は10乃至50年をおいて起つて不定期なのである。從つて前流行から30年前後を經て居ることの理由で今次の流行は世界的大流行であらうと考へるのは當を得て居らないのである。
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