論説
結核の素質問題
pp.67-68
発行日 1948年12月25日
Published Date 1948/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200377
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Verschner及びDiehl1)が1卵性双生兒の結核發病の研究によつて結核に對する先天性抵抗力の高低は強く遺傳することを議論の餘地なく明らかにしたので結核病自身は傳染病で遺傳病ではないけれども結核に對する素質は遺傳することが知られたのである。最近Puffer女史2)が結核の同異父母兄弟間の同胞集積性の廣汎な觀察に基いて結核の素質問題を高調した事實もあつて米國に於ては近時結核施策に素質問題が考慮されるに至つた。たとへば患家中心の重點的結核豫防施策の根據は患家では傅染源が居る爲めに家族感染の危險が大であり,又既感染者及び感染發病者の集積して居る丈けでなく結核患家の構成人員は結核に對する抵抗の弱い素質の者であるので結核豫防上特に指導管理が必要であると解されるに至つて居る。
我國に於ても近時荒谷其他によつて結核の家族集積性の觀察がなされて居るが結核が患家に集積すると云う事實であつてそれは患家には傅染源との接觸による感染の危險が大であると云ふ理由にもよる事象なので結核素質の遺傅の確證にはならないのである。本號所載報告の如く平山3)等も結核の家族集積性の研究を行つたが結核患者の居らない家庭を選んでその中のツ反應陽性者の頻度を見又結核既感染者だけについてその發病者の頻度を觀察しても有意義な家族集積性が見られることを發見した。
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