論説
ヂフテリヤ豫防接種による不祥事件
pp.63-65
発行日 1948年12月25日
Published Date 1948/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200375
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吾等はDudley1)や本誌所載の栃内工藤2)などの觀察の如く吾等の四周に出没する無數のヂフテリヤ保菌者に圍繞されて生活して居るものである。從つてFriedemann3)や本誌に平山4)が報告して居る如く本病患者の大部分は保菌者から傅染を受けて居る者であつて本病は所謂保菌者傅播性傅染病Carrier-borne Diseaseなのである。夫れ故未患兒を豫防種によつて四圍の保菌者群からの攻撃に堪えしめるようにすることが本病に對する合理的で且つ實行可能な唯一の豫防法であることは論者年來の主張である。この意味に於て豫防接種法の發布は本病の防遏上特に賀すべきことであつた。然るに本法公布後最初の定期接種の實施に當り京都市及島根縣に於て不慮の災禍を惹起し,本法の施行に大なる障碍を招來したことは誠に遺憾の極みである。12月21日現在前地に於ては死者實に62名,重症入院者128名,他に輕症者800名内外を生じ,又後地に於ては死者5名,入院者83名,他に中毒者241名を出して居ると報ぜられて居る。死者の多くは0-1歳の乳幼兒で,接種局所は腫張し,深い潰瘍を生じて中には上膊骨の露出して居るものがあつたとのことである。又重症者の多くは後痲痺を起して居る爲嚥下性肺炎を起して相次いで死んで行くので犠牲者の數は尚引績き増加しつつあると云う誠に悲惨な地獄繪を現出して居るのである。
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