論説
齒科衞生行政の進展
齋藤 潔
1
1公衆衞生院
pp.191-192
発行日 1948年8月25日
Published Date 1948/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200326
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齒科衞生は一國の公衆衞生の進歩の示標というも過言ではない。日本にだけいてはこのことに氣付かないが,一度歐米を旅したものは何人も否まないであろう。人の齒は文化とともに弱質となることは事實であろう。
所謂文化生活の中の或1つ又は幾つかの因子の綜合されたものによつて齒牙は次第に不良となり,現状では歐米人も日本人も齲歯の發生状況から見れば差異はない。彼我の小學校の身體檢査成績がこれを示している。歐米人及び日本人よりも生活程度の低い國々の學童では齲齒の數は比較的少い。この點では日本も既に文化國家の仲間入りしたようである。異る點は齒科衞生の水準が低いことである。歯科衞生の重點は齲蝕の早期發見とその豫防措置,齒牙の本來の機能を充分に發揮せしめるような措置及び早期治療である。こゝでは齒牙の衞生について述べたが,齒牙の衞生と齒科衞生とは同一義ではない。齒牙衞生とは身體器官の一つとしての齒牙それ自身の衞生であり,齒科衞生とは齒牙の衞生を通しての全身の衞生をいう一筆者はそう解している。なお,口腔衞生という語があるが,これは齒牙を含む口腔全般の衞生であつて,これも齒牙衞生と同樣身體の器官の衞生であらう。勿論一器官の健康が全身の健康に關係しないものはないであろうが,齒牙の場合は他と異つて特殊の關係がある。特殊の關係とは何か。
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