總説
鼠の衞生學的檢査
佐々 學
1
1傳染病研究所衞生動物研究室東京大學
pp.3-13
発行日 1948年5月25日
Published Date 1948/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200287
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A.まへがき
私共の研究室は衞生上有害な動物の研究を擔當しているが,この範圍には,病原原蟲,寄生蠕蟲,吸血昆蟲などの他に,もつと高等な動物の一つとして鼠の問題が大きな部面を占めている。鼠は人間の數々の病氣ペスト,ワイル氏病,鼠咬症,發疹熱,サルモネラ症,恙蟲病,旋毛蟲症等々の媒介をするのみならず,現在の我々の乏しい食糧を盗む害獸としての意義もまた案外に大きいものがある。今日まで,色々な方面の學者によつてこれらの問題が檢討されて來たが,それらの多くは動物學者としての鼠の研究,或はペストなり,リケッチアなり,スピロヘータなりの專門學者が鼠を病原學的な立場から行つた研究であるので,私は公衆衞生の見地から鼠を中心にこれらの問題を綜合的に取扱った解説を試みてみたいと思う。それぞれの土地で集めた鼠について色々な見地からこれを檢査して行くことはなかなか技術上むづかしい問題であるが,手順よく行うと同時に多方面の検査を行うことが出來るのであらゆる機會を利用して各地の衞生技術者の方々がこの種の檢査を實施して公衆衞生上重要な資料を加えられんことを希望してやまない。
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