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あとがき
高鳥毛 敏雄
pp.656
発行日 2014年9月15日
Published Date 2014/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401103105
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ある市の健康づくりの審議会で,市民に主体的な健康づくりをどうしたら実践してもらえるのかと議論をしていたところ,現場で診療している医師から最近高齢者から「先生は健康が大事と言ってくれますが,生きがいがないし,何で長生きしたのかなあと思っている」と言葉を返されることが多くなり困っているのだとの発言が出されました.超高齢社会の厳しい現実です.長生きしていることを喜んでもらえない高齢者が多くなっているようです.
本特集の玉稿を拝読して印象的だったことは,高齢者の経済格差や住宅問題でした.平山洋介氏から,わが国の都市は不動産都市としての側面が強く,住宅の階層差が若年・壮年期から拡大し,高齢期に最大化していること,持ち家を前提とした高齢者政策では低所得の高齢者には対応できない困った状況にあるとのご指摘をいただきました.室崎益輝氏から,災害対策の課題として高齢者の「社会孤立」と「危険環境」の2つの点をご指摘いただきました.高齢者が社会(世代)的に分離されていることが高齢者に災害の被害が集中していることにつながっていること,高齢者ほど老朽化住宅に住んでいるために災害時の高齢者の犠牲者数が多くなっていること,また零細な高齢者福祉施設は「社会孤立」「危険環境」の2つの問題を凝集して抱えている災害弱者であることをご指摘いただきました.
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