--------------------
あとがき
高鳥毛 敏雄
pp.360
発行日 2015年5月15日
Published Date 2015/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208191
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
医学生時代に学部の食堂は司法解剖室や監察医事務所の裏にありました.その横を通って食事に行っていたので,司法・行政解剖の風景とその臭いには慣れさせられました.監察医事務所長を兼ねていた当時の法医学教授から,行政解剖は公衆衛生の観点からのものであることは教えていただいていました.本特集の玉稿を拝読し,わが国の死因究明制度が正当に位置づけられていないことに,わが国の公衆衛生制度が未成熟であったことが関係していたと感じさせられました.わが国の公衆衛生制度も戦前は内務省,警察の影響力下にあったからです.医学部に公衆衛生学講座が設けられたのは戦後のことです.
死因究明制度が今でもまだ正当な位置づけが得られていないという現実はわが国の社会の問題でもありますが,実は公衆衛生制度の問題でもあると感じさせられました.死因究明制度が確立されているイギリス,オーストラリア,スウェーデンなどの国が,公衆衛生制度を誕生させたり,社会保障制度をつくりあげたりした国であることは,決して偶然なことではないと感じさせられました.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.