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あとがき
高鳥毛 敏雄
pp.880
発行日 2009年11月15日
Published Date 2009/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101682
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9月中~下旬にニューヨーク市の保健担当部を9年ぶりに訪れたところ,部の名称が「Department of Health」から「Department of Health and Mental Hygiene」に変わっていました.従来の保健課題とともに,たばこ・アルコール,薬物依存,暴力や虐待が大きな公衆衛生課題と位置づけられているようでありました.
さて,本特集では衛生行政,精神医学の立場,さらに法学,当事者支援の立場から,予想を超える玉稿をいただき感謝しています.薬物汚染の渦中にいる青少年と長年関わり続けておられる水谷修氏の「薬物乱用は伝染病である」「薬物依存者は愛の力や罰で直すことができない」とのお言葉からは,問題解決の厳しい現実が伝わってきました.妹尾栄一氏からは薬物乱用対策に苦労している欧米の状況を紹介していただきました.中山康直氏は,大麻は日本人の生活との深い関係があり,戦前までの日本人には大麻を乱用した経緯は見受けられないと述べられています.大麻が日本社会に根づいていることが,杉澤孝久氏が紹介して下さっている北海道の野生大麻との戦いに窺い知ることができます.大麻取締法の弁護活動を34年間してこられた経験に基づく丸井英弘氏の「事件の被害者は皮肉なことに逮捕された本人とその家族である」とのお言葉は,衝撃的なものでありました.
薬物乱用は難しい課題でありますが,本特集を薬物乱用防止,薬物依存者に対する支援の参考にしていただければと思います.
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