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はじめに
呼吸器症状を有する患者に対する画像診断として,通常,最初に行われるのは胸部X線検査であり,世界で最も広く行われているX線を使った検査である.胸部X線検査の特徴は,検査時間が比較的短く,感染症など病変の形態と位置をフィルム上に描出できることである.さらに,結核菌を排菌していない早期感染時の患者を発見できる可能性がある一方,結核菌の感染特定はできない.日本では,X線撮影装置を搭載した検診車が1940年に開発された経緯から,喀痰検査を主な診断手段とする多くの開発途上国(以下,途上国)とは歴史的背景が異なる.
胸部X線検査の精度を左右するのは,医師の読影能力だけでなく,X線写真の画質の優劣もある.途上国で行われる胸部X線写真は,さまざまな理由から,医師が読影できないほど高い濃度の写真,肺野がごく一部しか写っていない写真,焦点がずれたものなど,胸部疾患の診断ツールとしては不適当と考えられる胸部X線写真が少なからずあり,筆者ら1)はその撮影技術改善の必要性を以前より指摘してきた.この問題解決の糸口として,世界結核支援技術連盟(Tuberculosis Coalition for Technical Assistance;TBCTA)の支援を受け,途上国での胸部X線検査精度管理のためのハンドブックを2008年に作成し,これをテキストに用いた放射線技師対象の研修をカンボジアとケニアで実施した.さらにその後,フィリピンでオペレーショナル・リサーチとして同様の研修を実施し,放射線技師の胸部X線写真撮影技術向上に有用であることを報告した.
本稿では,途上国における喀痰塗抹陰性肺結核患者の確実な発見を目指した取り組みについて報告する.
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