マスターしよう検査技術
塗抹検査の精度管理
浦 敏郎
1
1国立循環器病センター臨床検査部
pp.1129-1132
発行日 1996年12月1日
Published Date 1996/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902942
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はじめに
微生物検査部門における精度管理は大きく立ち遅れているのが現状である.すなわち,検査材料は種類が多く,採取・保存・輸送による変化を受けやすいこと,検出対象や検査手技も多種多様で公的な標準法がほとんど見当たらないこと,検査結果を客観的数値データとして取り扱うことが困難であることなど,微生物検査の持つ性格が精度管理を実施するうえで大きな障害となっている.1986年に登録検査所において精度管理を実施することが義務づけられたが,採算性や作業効率のよくない現在の一般的な微生物検査室において,すべての内部精度管理を厳格に行うのは事実上不可能であると思われる.
一方,グラム染色をはじめとする塗抹検査は,最も簡便な迅速診断検査として日常広く行われているが,鏡検の段階においては術者の経験や熱意がものをいう部分が少なくない.さらに,菌量などの定量表現には施設独自の区分が用いられており,報告のしかたもさまざまである.塗抹検査の精度を向上させるためには,試薬管理や染色技術の面ばかりでなく,鏡検判定法を基準化するとともに,施設内外で塗抹標本を見る目を養い,教育・指導することが必要であると考えられる.現在のところ塗抹検査の精度管理法自体に標準法はないが,本稿では最も基本的なグラム染色法を中心にその具体的方法を解説する.
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