映画の時間
―1980年代ポーランドの厳しい体制下,人々は自由と未来のために立ち上がった―ワレサ 連帯の男
桜山 豊夫
pp.291
発行日 2014年4月15日
Published Date 2014/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102997
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1989年11月にベルリンの壁が崩壊しました.東欧諸国の民主化の象徴として語り伝えられる出来事ですが,それに先立つ6月に,ポーランドでは自由選挙が行われ,統一労働者党(共産党)が大きく後退して民主化が進展しました.このことがベルリンの壁崩壊に大きく影響したと考えられます.今月は,ポーランドの民主化の進展,ひいては東欧社会主義圏の民主化に大きく貢献したレフ・ワレサを描いた作品をご紹介します.
1980年代の初め,イタリアの著名なジャーナリストであるオリアナ・ファラチが,インタビューのためにワレサの自宅を訪ねるシーンから映画は始まります.既に独立自主管理労働組合「連帯」の活動が活発化している頃で,ポーランドの国家警察が連帯の委員長であるワレサを監視しているなかでの訪問であり,当時の緊張感が観客にも伝わってきます.多くの観客が同時代の出来事として承知している事柄を映画化することは,たいへん難しい作業だと思いますが,アンジェイ・ワイダ監督は冒頭から国家権力による弾圧の一断面を描くことにより,観客を映画に引き込んでいきます.
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