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はじめに
わが国の自殺者数は平成24(2012)年では27,858人であり,減少傾向にある1).平成15(2003)年には自殺者が34,427人であったので,このピーク時と比較して平成24(2012)年は19.1%の減少を示したことになる.この減少が対策の効果によるのか,自然の減少によるのかを明らかにすることは,今後の自殺対策の推進に大きな鍵となる.
自殺は複合的要因が作用して起きるものと考えられ,社会経済的要因の影響は無視できないため,減少の効果を厳密に検証することは難しい.また,対策の効果の検証は社会実験であるため,介入群と対象群を設定することができない.そのため,対策の効果(人為的介入の効果)を社会経済的要因のような背景的要因から区別することができないのである.
地方自治体の自殺対策を強化するために,平成21(2009)年度補正予算において100億円の地域自殺対策緊急強化基金が造成され,都道府県における総合的な自殺対策の強化がなされた.事業メニューとして示されたのは,次の5つである.①対面型相談支援事業,②電話相談支援事業,③人材養成事業,④普及啓発事業,⑤強化モデル事業.これに加えて,平成22(2010)年度から厚生労働省分の予算として「うつ病医療体制強化事業」が追加された.これらの事業は地域の実情を踏まえて自主的に取り組む地方公共団体の対策や民間団体の活動などの支援により,最終的な目標として「地域における自殺対策力」を強化することを目的としている.
基金が創設されて3年が経過したことを受けて,平成24(2012)年度には内閣府に「地域自殺対策緊急強化基金検証・評価チーム」が編成され,平成23(2011)年度までの効果検証が行われた.平成25(2013)年7月には,新たに自殺対策検証評価会議が設置され,中立・公正の立場から自殺対策の施策の実施状況,目標の達成状況などの検証を行うことになった.平成25(2013)年11月には自殺対策検証評価会議の報告書が公表された2).本稿では,この報告書に基づいて地方自治体の自殺対策の効果と評価について概観することにする.
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