特集 出生前診断
出生前診断・着床前診断と優生学
山口 裕之
1
1徳島大学ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部
pp.176-180
発行日 2014年3月15日
Published Date 2014/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102967
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
出生前診断と中絶
2013年4月から始まったいわゆる「新型出生前診断」の臨床研究に参加した妊婦約3,500人のうち,胎児の染色体異常が確定した54人中53人が中絶を選択したことが大きく報道された1).しかしこれは,はっきり言ってしまえば予想通りの結果である.新型であれ従来型であれ,出生前診断の意義について,「胎児の状態を事前に知ることで,異常のある胎児に対して出生後すみやかなケアが行える点にある」という意見もあるが,こうした診断のクライアントとなる一般の人々にとってみれば,出生前診断は「異常があった場合に中絶するため」という感覚が根強いであろう.
ちなみに,イギリスやカリフォルニア州では出生前診断の費用は「社会的予防システム」として公費負担されている.これは,先天異常のスクリーニングのコストを負担するほうが,障害児が出生した場合のコスト負担よりもメリットがあると判断されたためだという2).そして実際,大多数の妊婦が出生前診断を受け,異常が確定した場合には多くが中絶を選択する.
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.