ジュネーブからのメッセージ
ゆく年くる年
中谷 比呂樹
1
1WHO事務局
pp.1018
発行日 2013年12月15日
Published Date 2013/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102917
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12月になると日に日に出勤してくる職員の数が減り,15日以降のオフィスは静かそのもの.たまった書類を整理したり,来年の計画を立てたり.充足感,希望,そして少し反省が入り混じった念をもって,クリスマスの飾りつけで華やかなジュネーブの風景を見る季節となる.そこで今回は,今年をふり返る意味でも私が考える2013年の国際保健の5大潮流を書いてみたい.
ひと言で言えば2013年は潮の静かな変わり目の年であったように思う.まず,第1が疾病構造の変化が世界的規模で起こっていることが確認されたことである.5月に公表されたWHO年次統計報告では健康格差が縮小しつつあることが明らかになり,クリス・マレー博士らの世界疾病負荷研究報告では,虚血性心疾患が肺炎を抑えてDALYs(障害調整生命年,disabilty-adjusted life years)リストのトップとなり,3大疾患は,これらに加えて脳卒中.長らく途上国で猛威をふるってきた下痢は4位,HIVは5位に後退している.第2が,このような疾病構造変化は,国際公衆衛生の力点を感染症から非感染症にシフトすべきという論議を巻き起こし,WHO総会では,「非感染症の予防と管理に関する行動計計画とその評価指標(4疾患25評価項目)」,「精神保健行動計画」そして「予防可能な失明と視力障害対策行動計画」が相次いで議決された.
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