今月の言葉
助産婦のゆく手
pp.4
発行日 1952年8月1日
Published Date 1952/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200153
- 有料閲覧
- 文献概要
近頃各地に官公立或は兒童福祉法に基く産院が設立されつつある。このような際に,その附近の助産婦がその設立に対して反対運動をすることがあるとのことである。これはあまり軽費の産院が設立されたのでは,自宅分娩が減り,そのために助産婦の取扱う分娩数が少くなり,收入が減るから,ということが反対の主なる理由のようである。なるほど收入という点から見れば,このような反対は無理もないことであり,又いくばくかの効果はあるかもしれないしかし設備もよい,軽費の産院ができることは,国民大衆にとつて最も望ましい,観迎すべきことなのである。この国民大多数によつて利益となるべきことに,少数の一階級のみが反対しても,とうてい効果がないことは明かである。いな効果がないのみならず,社会からの強い反撃をうけることになるであろう。現在開業助産婦の生活が圧迫されてきたことの原因は,決して單純ではない。したがつてこの難局打開のためには,消極的に産院設立に反対したくらいで解決されるものではない。これは今後のわが国医療制度とも密接な関聯をもつのみでなく,助産婦の養成制度或は学歴等とも結びついている。従来の府県別の試験制度によつて,無計画,無制限に助産婦を認可し助産婦過剩を来したことも,現在のように苦境に陷つた点を考えるならば,今後助産婦の教育内容を高めることも,助産婦の地位向上のための必須条件である。
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.