特集 公衆衛生の危機
公衆衛生システムの危機―専門性とアイデンティティ強化のために
佐甲 隆
1
1桜木記念病院
pp.6-10
発行日 2013年1月15日
Published Date 2013/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102630
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はじめに
今,社会全体が過渡期にあり,再生の苦しみにあえいでいる.公衆衛生も例外ではない.法整備や制度充実によって,高い健康水準と世界的な長寿を実現した日本の公衆衛生システムも,多くの問題を抱えている.
現実的な危機の深刻さは,事件そのものの規模や重大性と,それに対応できるシステム能力との間の落差に他ならない.システムがしっかりしていれば,被害の多くは防げるが,制度疲労があると社会的負荷も増す.近年,従来の制度では限界があると感じる課題も増えてきた.また人材面でも,専門性やアイデンティティへの不安がある.これまで,様々な問題解決を先送りにしてきたつけが回ってきたようだ.
一見盤石に見える日本の公衆衛生システムは本当に機能しているのか,課題への対応能力はどうか,どう改革すべきなのか,が本論の問題意識である.システム危機を放置すれば,人災につながる.厳しい現状の認識は痛みを伴うが,これは改善と向上の出発点でもある.時代の転換期である今こそ,真剣に現実に向き合い,その本質的問題とこれからの方向性を考えたい.
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