特集 原子力災害と公衆衛生
原子力災害を公衆衛生はどう受け止めるべきか
岸(金堂) 玲子
1
1北海道大学環境健康科学研究教育センター
pp.928-932
発行日 2012年12月15日
Published Date 2012/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102601
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災害勃発から2012年9月原子力規制庁発足まで
東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故は,重大な放射能汚染を引き起こした.住み慣れた土地を追われ,高線量汚染地域を中心に多くの市民は未だ不自由な避難生活を送っている.一部では避難が解除されたものの,今後も場所によっては数十年余に亘る避難生活であろう.比較的低線量地域でも汚染地に留まった子どもたちとその家族も,不安に苛まれ外遊びも自由にできない生活を強いられている.
災害発生直後には,飲料水,魚,茶,牛肉と次々に食の放射能汚染が報道される中で,市民からは外部被ばくのみならず,内部被ばくを含めて放射線の健康影響の「不確かさ」への不安は特に大きかった.東京電力(以下,東電)や政府,原子力安全・保安院や内閣府原子力安全委員会などの対応には不満や怒りの声が出された.科学者の発する意見や助言の中立性に対しても疑義が高かった.筆者は本誌で昨年度は2回にわたり原発事故による放射線被ばくと健康・安全に関わる科学的な論点,および専門家,学協会や日本学術会議などの役割について述べてきた1,2).
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