特集 原子力災害と公衆衛生
わが国の原子力施設の現状とシビアアクシデント
小澤 守
1
1関西大学社会安全学部
pp.933-939
発行日 2012年12月15日
Published Date 2012/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102602
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
2011年3月11日に勃発した東日本太平洋沖地震ならびに巨大津波は東北から関東の太平洋側を襲い,2万人近い犠牲者を出すとともに,海岸に立地する原子力発電所や火力発電所あるいは石油関連プラントなどの社会インフラに甚大な被害を与えた.なかでも東京電力福島第一原子力発電所(以下,福島第一原発)は地震による鉄塔倒壊などから外部系統電源を喪失し,さらに津波により非常用ディーゼル発電機,配電盤が冠水していわゆるStation Black Out(以下SBO:全電源喪失)状態となり,海水冷却システムなどが損傷・機能喪失したため冷却不能状態に追いこまれた.その結果,1号機,3号機,4号機で水素爆発,1~3号機では炉心が溶融し,大量の放射性物質が周囲に拡散した.これによってわが国始まって以来の,10万人を超える地域住民が避難を余儀なくされた.事故後,政府,国会,民間の各事故調査委員会が立ち上がり,また当事者である東京電力による事故調査報告も公表された.全燃料が燃料プールに移設されていた4号機の状況はかなり明らかになり,また試験的に燃料棒の取り出しも行われたが,残る1~3号機にはいまなお十分な調査もままならない状況にあり,事故の正確な進展や被害の状況も詳(つまび)らかではない.
本稿ではまず,わが国における原子力開発と関連施設の状況,さらには開発の課程で行われてきた安全研究の状況などについて述べ,さらに事故について説明して問題点など指摘しておきたい.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.