特集 放射線と向き合う
放射線の環境影響―国際的な研究動向と最新知見
酒井 一夫
1
1放射線医学総合研究所放射線防護研究センター
pp.834-837
発行日 2011年11月15日
Published Date 2011/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102254
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はじめに
人間の活動が環境に与えるインパクトが議論される中で,放射線が環境生物や生態系に及ぼす影響についても関心が高まっている.チェルノブイリ事故によって環境中に放出された大量の放射性物質の影響がひとつのきっかけであるが,その他にも原子力関連施設の稼働や,放射性廃棄物の処分等に伴う放射性物質の環境中への放出も関心の対象である.
「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」では,1996年1)と2008年2)に「ヒト以外の生物種への放射線の影響」と題する報告書を公表している.また,放射線防護に関する基本的な勧告を発表している国際放射線防護委員会(ICRP)では,環境の放射線防護を考える基礎的な情報として,放射線が環境生物に与える影響について取りまとめている3).
本稿では,主にICRPでの取りまとめに沿って,放射線の環境への影響に関する動向と知見を概観することとしたい.
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