特集 神経疾患対策へのアプローチ
神経疾患研究の国際的動向—産業および環境保健に限定して
荒記 俊一
1
,
横山 和仁
1
ARAKI・Shunichi
1
,
YOKOYAMA・Kazuhito
1
1東京大学医学部公衆衛生学教室
pp.178-179
発行日 1990年3月15日
Published Date 1990/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900050
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■はじめに
産業および環境保健領域の神経疾患は古くから知られている.例えばNicanderは紀元前2世紀に,鉛による筋麻痺の発生を報告している.近代になり,Delpachは二硫化炭素による精神障害を報告し,1960〜70年代になるとアクリルアミド,メチル-n-ブチルケトン,ノルマルヘキサン,クロルデコンなどの新しい化学物質や振動工具作業等の物理的因子による神経障害が,欧米諸国やわが国で多数報告されるようになった.最近では,有機溶剤,農薬,重金属などの長期間低濃度曝露による非顕性(Subclinical)の神経障害の発生が注目を集めている.また,エイズ(AIDS)のようなこれまでにない生物学的因子による神経障害も問題となっている.
本稿では,神経疾患研究の最近の国際的動向を紹介する.この方面の研究は広く基礎,臨床および社会医学の諸分野にまたがるので,今回は公衆衛生学的立場より主に産業および環境保健領域を中心に記述する.
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