特集 再考:HIV/AIDS予防対策
HIV/AIDS予防研究の現状―ワクチン開発を中心に
俣野 哲朗
1
1東京大学医科学研究所感染症国際研究センター
pp.936-940
発行日 2010年11月15日
Published Date 2010/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101948
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はじめに
HIVの発見から25年以上を経た今日においても,世界のHIV感染者数の増大は深刻な問題である.アフリカを中心とした流行地域でのHIV感染拡大は,HIVに増殖・変異の場を与えることから,宿主免疫反応による抑制をより受けにくいHIVの出現に結びつく可能性や,先進国で奏効している抗HIV薬に対する耐性変異株出現に結びつく可能性,さらには,免疫能が低下傾向にあるHIV感染者数の増加により新興再興感染症出現を促進する可能性も危惧されている.このようなHIV感染拡大は,グローバルな視点で取り組む克服すべき国際的重要課題であり,ウイルス増殖の場を減らすという予防戦略がHIV感染症克服の基本となる.
感染拡大阻止のためには,衛生行政・国民への啓発などの社会的予防活動に加え,ワクチン,抗HIV薬を含めた総合戦略が重要である.HIV感染症のように感染から発症までに時間を要する慢性感染症では,基本となる社会的予防活動だけによる封じ込めは困難であることから,HIV感染拡大阻止の切り札として,予防エイズワクチン開発は鍵となる戦略である.この予防エイズワクチン開発は,主対象であるHIV感染流行地域での感染拡大阻止を介して,流行地域以外も含めた世界全体のHIV感染症克服に結びつくという認識である.
本稿では,以下,この予防エイズワクチン開発の現状について解説する.
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