フォーラム
自殺における社会経済要因とその対策
田中 剛
1,2
,
近藤 克則
3
1前岐阜県健康福祉部保健医療課
2現国立精神・神経センター運営局政策医療企画課
3日本福祉大学社会福祉学部保健福祉学科
pp.78-85
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101722
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はじめに
「外因死」は,意外に多い.人口動態統計では,外因死の主な構成要素である自殺と交通事故死を合計しただけでも,悪性新生物・心疾患・脳血管疾患といった3大死因および肺炎に続き第5位で,死亡総数の7%余を占めている1).他にも,転倒・転落,溺水,煙・火災および火焔による傷害,窒息,中毒等といった不慮の事故死と他殺が含まれる.つまり病死と自然死以外のほぼすべての死に該当することになる.中でも自殺に関しては年間3万人を超える状態が続いたため平成18年には自殺対策基本法が制定されるなど,公衆衛生上の重要課題の1つとなっている.
外因死と社会経済因子との間には,強い関連があることが国内外の多くの研究で明らかにされている.例えば,日本のJACCコホート研究では,低学歴群(15歳以下)では高学歴群(19歳以上)に対し約1.8倍も外因死のリスクが高いことがわかっている2).今後は,このような社会経済的因子の影響の大きさを踏まえた対策を考えることが求められる.
そこで本稿では,外因死の中から特に自殺を取り上げ,社会経済的因子との関連についての研究を紹介する.また,どのような社会環境要因に介入すれば自殺を減少させることができそうなのか,考察を加えたい.
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