連載 人を癒す自然との絆・5
介助犬の訓練をとおして学ぶこと
大塚 敦子
pp.938-939
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101695
- 有料閲覧
- 文献概要
少年更生施設に入っている少年少女たちに,介助犬を訓練させる――ずいぶん突飛なアイデアに聞こえるかもしれない.体の不自由な人を手助けする介助犬の仕事は,落としたものを拾う,電気をつけたり消したりするなど様々だが,訓練する側には相当の忍耐が必要だ.問題を抱えた少年たちに,果たしてそんなことができるのかと思う人もいるだろう.ところが,アメリカでは90年代後半から取り組みが始まり,いまでは全米のあちこちで行われているのである.発案したのはカリフォルニアのボニー・バーゲン博士.介助犬や人と犬の関係について研究を行うバーゲン大学の創設者で,1970年代に,世界で初めて介助犬を育成したパイオニアだ.犬を訓練する過程からは,人が社会で生きていくうえで必要なレッスンの多くを学べると確信し,地域の少年更生施設の少年少女たちに,介助犬の訓練を教えるプロジェクトを始めたのである.
介助犬の訓練は,なぜ少年少女たちの更生に役立つのだろうか.私は地域の少年更生施設シエラ・ユース・センターに何年か取材に通ったが,相手が思い通りにならないとすぐにカッとなりがちな少年少女たちが,犬が相手だと意思を通じ合わせるために一生懸命努力する姿に感銘を受けた.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.