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はじめに
本シリーズの筆者担当分の最後は,「ありふれた疾患・障害への産業医学―問診と職場改善の重要性」とした.このテーマは,筆者が坂総合病院(財団法人宮城厚生協会:塩釜市)において内科内産業医学外来産業医学科を開設し,そして現在の診療所併設型産業医学センターで約30年経験してきた活動から,最も重要な点ではないかと思っている.
1979年に坂総合病院に産業医学科を開設した.医師・医療従事者,患者本人,労組・諸団体,誰でもが,自身の疾病や症状・不調に対して労働や労働条件,職場・家庭の環境状態が関わっているのではという疑問が生じたら診察を受け入れるとし,①詳しい問診,②疾病・障害と労働・環境の関係を検討(検査含む),③職場や家庭の評価,を活動の3本柱とした.スタッフは筆者(当時呼吸器科長兼産業医学科科長),産業医学研修医1名,保健婦(当時)2名,事務2名であり,職域健診も担当していた.①~③で「疾病と環境の関わりの診断」が得られたら,紹介医に戻したり継続しうる診療科に紹介した.典型的な職業病や労災申請(検討から認定)事例,職場改善実施中事例,産業医契約職場からの事例は診断後も取り扱った.
私が(というより病院や内科)産業医学科開設の際予想(期待)したのは,塵肺や化学物質中毒のような典型職業病の方との出会いであったが,実際に受診された方々のほとんどの症状が「肩こり・上肢痛,腱鞘炎,腰痛症」だった.それで筆者は呼吸器診療は続けながら,自ら整形外科の勉強を始め,写真読影会にも参加,可能な範囲で手術(形成外科含む)にも入らせて頂いた.この「整形外科研修」はその後の筆者の診療にも大変役立つことになった.産業医学科・外来や健診に来る患者の主訴が「骨・筋・関節障害=整形領域」であることは,今日まで続いている.
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