特集 弱者への暴力
介護サービスを利用する側から介護労働者への暴力
篠﨑 良勝
1
1八戸大学人間健康学部
pp.669-673
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101630
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利用者側からの暴力や性的嫌がらせの実態
介護保険制度が施行される前から,介護労働者が利用者やその家族から身体的・精神的暴力や性的嫌がらせなど,様々なハラスメントを受けている実態は存在していた.しかし,その実態調査はまったく行われていなかった.それは,一般の人だけではなく,社会福祉領域の研究者でさえ「介護は福祉であり,福祉サービスを受ける相手は社会的弱者である」という固定観念に縛られていたためである.たとえ介護労働者が利用者側からハラスメントを受けたとしても,利用者側に対する同情心や諦めという気持ちが優先し,公表をすることを躊躇していた.しかし,介護保険制度が施行されると,それまで以上に利用者側の意識が変わり,看過できない状況が出てきた.
介護労働者が身体的・精神的暴力や性的嫌がらせを職務中に受けた経験を2002年と2007年で比較すると(図1),特別養護老人ホームなどの施設で介護に従事する施設介護職員では,経験ありの介護労働者は4.5ポイント増であるが,利用者の自宅などに訪問して介護サービスを提供する訪問介護員では,経験ありの割合が14.4ポイント増となっている.
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