研究報告
在宅サービスの利用が家族介護者の介護負担感に及ぼす影響に関する研究―訪問介護,通所介護,短期生活入所介護別サービス利用の効果
筒井 孝子
1
1国立保健医療科学院福祉サービス部福祉マネジメント室
pp.630-639
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101669
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【目的】本研究では,在宅で生活する要介護高齢者の家族介護者を対象として,彼らの主観的負担感に,3つの介護サービスが与える影響をそれぞれ明らかにすることを目的とした。【方法】在宅で介護を継続している女性介護者493名を対象に,要介護高齢者の属性(性,年齢,要介護度,IADL,認知機能,BPSD),介護者の基本属性(年齢,続柄),介護サービス(訪問介護,通所介護,短期生活入所介護)の1か月の利用回数,介護負担感を調査した。解析は,IADL,認知機能,BPSD,介護負担感を従属変数とする多重指標モデルを構築し,主観的負担感については,ストレス認知過程におけるサービスの調節効果として,多母集団の同時分析による構造方程式モデリング等により検討した。【結果】分析を行なった3つの介護サービスのうち,訪問介護にのみに潜在的ストレッサーと介護負担感の関係の因果モデルにおいて統計学的な差を意味する3.411という調節効果が認められた。【考察】現状では,通所介護や短期生活入所介護は,介護者の負担軽減を理由に選択される傾向が強いサービスとなっているが,主観的な負担感の減少はなかった。このことは,介護者の主観的負担そのものをサービスの提供によって軽減することは相当困難であることを示している。【結論】介護サービスの選択に際しては,高齢者や介護者にとって,本当に実効性のあるサービスは何かを十分に検討しなければならないことを意味している。
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