視点
若者の殺人事件をどう理解するか―アノミーを視点に
芹沢 俊介
pp.632-635
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101631
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若者や子どもの起こした殺人事件を前にすると,いつもアノミーという状態を想定したくなる.アノミーは,100年ばかり前にフランスの社会学者エミール・デュルケームが『自殺論』の中で提出した概念である.私なりの理解を記せば,一人の人間の内部世界の秩序,つまり社会性が自力では修復不能なほどに崩壊してしまったことがもたらす感情の無規制状態を指している.
これを実感的に知りたければ,たとえば何らかの理由で(たとえば突然の災難),自分の日常の暮らしを安定的に支えていたすべてが無に帰したことによる絶望的な内面状態を想像してみるのがいいだろう.これまで確かにあると信じてきた足下の生きる基盤が崩壊,再興の手だてもなく,無力感にさいなまれる.むろん希望など抱きようもない.
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