特集 日本の食を守れるか?
日本の食料自給率はなぜ低いのか
①世界の食糧需給の社会的背景
丸井 英二
1
1順天堂大学公衆衛生学
pp.869-873
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101436
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今から15年近く前,1994年にワールド・ウォッチのレスター・ブラウンが『飢餓の世紀(Full House)』を出版した.もちろん食糧問題は一部ではすでに大きな問題となっていたが,その頃の一般の人々にとっては,まだまだ遠い問題であった.しかし,わが国の食料自給率が熱量ベースで40%を切り,輸入食品の安全性がマスメディアで大きく取り上げられるようになった段階で,経済問題としても環境問題としても食糧問題は大きな関心を集めるようになっている.しかも,単に食糧が足りるとか足りないという数量の問題だけではなく,そこには世界の政治経済的と言うべき社会的な背景がある.
日本は食に関して特殊なのか,それとも多くの国が似たようなもので,例外的ではないのだろうか.もちろん,食糧自給率が日本のように低い国は少ない.そして,一般的に食の問題は国の安全保障の問題と並行して語られる.「いざというとき」国民を養っていけるだけの食糧を確保できるかどうかが,政治的あるいは外交的な判断を支えることになるからである.ところが,ここに「いざというとき」とは何か,という疑問が常につきまとう.いざという事態が起らないように相互依存関係を維持しておくことが大切であるという議論もあるからである.食糧の問題は時として政治と表裏一体をなしている.
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