特集 現代の貧困と健康
国民健康保険滞納者の健康破壊は皆保険体制崩壊の始まり
芝田 英昭
1
1立命館大学産業社会学部
pp.708-716
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101398
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国民健康保険(以下「国保」)は,国民の約4割1)が加入する公的医療保険であり,1961年の皆保険体制確立の根幹をなす制度である.しかし,今や滞納世帯は加入世帯の18.6%(約475万世帯,2007年度),保険料を「特別の事情」がなく1年以上にわたり滞納しているとして正規の保険証が取り上げられ「国民健康保険被保険者資格証明書(以下「資格証)」が交付されている世帯は,約34万世帯2)に上っている.
国保法第1条(この法の目的)は「この法律は,国民健康保険事業の健全な運営を確保し,もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」(1958年12月成立)と謳い,憲法第25条の生存権規定を具現化したものと評価できる.しかしNHKは,2008年1月21日3)に,過去2年間で資格証か無保険状態で病状が悪化し病院にかかった時点では手遅れで亡くなった方が41人4)いることを明らかにした.国民の健康を守るはずの制度が,国民の命を切り捨てる結果となっていることは,「保険証さえあればいつでもどこでも気軽に医療機関にかかれる」とした皆保険体制が既に崩壊していることを示している.
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