連載 研修医とともに学ぶ・1
「研修医は学生ではない!」地域保健・医療研修の理念
嶋村 清志
1
1滋賀県甲賀保健所
pp.321
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101310
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新医師臨床研修制度では,1 か月以上の地域保健・医療研修が必修になっています.その間,研修医は公衆衛生の第一線の現場を体験することが極めて重要で,実地訓練を中心に一貫した成人教育によって,人格の涵養と社会科学的成熟が求められています.
当所では,地域の学習資源等を最大限に活用しながら,次のような理念に基づきプログラム(表)を策定しました.①そもそも研修医は学生ではなく,医師免許や保険医登録のある医師であること.②給料が支給されている社会人であり,職員と同様,組織の一員として行動してもらうこと.③担当職員がいちいち世話を焼くのではなく,外部研修先に対しても研修医が自ら電話等でアポをとり,挨拶や自己紹介,TPO に合わせた服装の選択も研修の一環としたこと.これは外部関係機関との基礎的な調整能力を獲得するプロセスであり,社会人としての成熟を目指す方略であること.④できるだけ公共交通機関を利用して,研修医ひとりで現場に出向き,地域住民の生の声や生活の様子を自分の眼で観察できる機会としたこと.⑤地域医療研修では,自身が目指すべき開業医の熱意に応えられるよう,研修医の専攻科目を事前に聴取し,先輩医師会員にもアンケートをしてミスマッチを防いだこと.これは,将来的に地域の医師確保にもつながる方略であり,琵琶湖の鮎のように,一廻りも二廻りも大きくなって滋賀県に定着してくれることを期待しているものです.
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