特集 現代の保健所論・1
保健所の現在・未来
犬塚 君雄
1
1愛知県健康福祉部技監
pp.334-337
発行日 2003年5月1日
Published Date 2003/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100859
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戦後50年を経て,わが国の中央集権体制に制度疲労がみられ,国・地方を問わず行政改革に取り組むなか,保健所を中心に数多くの成果を上げてきた衛生行政も,例外となることなくその荒波に揉まれている.地方分権が進むなか,サービス提供のあり方,都道府県と市町村の役割分担のあり方,規制緩和と必置規制の見直し,福祉との統合などの点から,保健所のあり方が厳しく問われている.本特集ではこれらの論点に対して気鋭の保健所長がそれぞれ考え方を述べることとなっており,本稿で筆者は,総論的に基本的な考え方を記すこととする.
保健所をめぐる最近の課題
最近の保健所をめぐる状況の変化で最大のものは,何といっても地域保健法施行以来続いている保健所の統廃合である.愛知県でも2度にわたる保健所の再編が行われた.1回目は地域保健法制定の趣旨に沿って保健所の機能強化策として行われたが,2回目は本県独自の行政改革の一環として,すべての部局対象の地方機関再編に巻き込まれる形で行われた.全国的に見て現在も保健所の統廃合が続いている理由としては,衛生行政のあり方を議論した結果に基づくものより,地方行政改革の影響が強いと考えられる.その結果,それぞれの保健所が所管する区域は拡大し,一部の機能は集中化され強化されたが,規模の拡大は保健所と市町村や住民との距離を遠ざけ,機能の集中化は行政改革の目玉である職員数の削減に利用され,保健所全体の機能強化にはほど遠い実態となっており,保健所のあり方が問われ続けている.
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