特集 地域から取り組むリプロダクティブ・ヘルス―新しい出産像を求めて
母の出産・子の出生を考える
久 靖男
1
1医療法人・母と子の城・久産婦人科医院
pp.184-186
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100821
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日本の少子化に歯止めがかからない.戦後50年の短期間にあまりにも大きい日本社会の構造上の変化,価値観の多様性など出産にかかわる変化があり,子を産み育てることが,かつてのように女性にとっての喜び,満足,楽しみと感じることができなくなったためである.出生率の低下と反比例して,児童虐待,学級崩壊,いじめ,不登校,青少年犯罪,自殺などは増加の一途をたどり,子どもを取り巻く環境は危機的な情況で,特に教育現場の荒廃は眼を覆うばかりである.これらの情況を産み出している種々の要因の中で,出産における母と子の体験が大きな影響力をもつとすれば,一刻も早く周産期の医療を変革し,母子の環境をより良い方向に改善する必要がある.
子どもの健やかな成長には母と子の健全な愛着関係(絆)の形成が不可欠であり,出産を契機に,女性から母親への変容――豊かな母性の成熟が必要である.この2つは表裏一体のものであるが,今回このやや難解なテーマについて,限られた誌面の中で私見を述べてみたい.
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