連載 介護保険下の公衆衛生活動を考える・11
猫屋敷
関 なおみ
1,2
1池袋保健所健康推進課医務担当係
2前中央保健福祉センター 保健医療担当係
キーワード:
環境衛生対策
,
緊急ショートステイ
,
暫定プラン作成
Keyword:
環境衛生対策
,
緊急ショートステイ
,
暫定プラン作成
pp.148-149
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100813
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- 文献概要
女性(88歳):痴呆,要介護2,一人暮らし,木造アパート1階部分
「介護保険」という意外な切り口
見た目や臭気から環境衛生に問題があり,常々近隣から苦情を言われる家というのはどの地域にもある.特にペットに関連する問題は,保健所の生活衛生担当に通報されるケースが多いが,実際は法的権限がないので,なかなか介入できない.このような事例は一見,介護保険制度と無関係のように見えるが,対象者が高齢の場合,実は重要な切り口になることがある.
いわゆる「猫屋敷」は以前から近隣で有名だった.猫十数匹と同居する高齢女性は,再三近所から立ち退きを迫られていたが,現在までがんばっていたらしい.実は1年前に保健所の生活衛生課にも苦情が来ていたが,何もできずに終わってしまっていた.ついに本人の痴呆が進行し奇行が出現し始めた.ある日銀行に行ってお金が下ろせず,区民事務所に間違えて現れたため,「靴下も片方しか履いていない.ドブくさい匂いがした」と窓口職員から保健福祉センター(以下センター)に連絡が入り,民生委員からもセンター長に相談があったため,さっそく係長と保健師が訪問した.本人は保健師の「何かお困りではないですか?」という問いかけに拒否せず,「これでは猫の餌を買うこともできない.車に轢かれて死んでしまいたい」と言うので,金銭管理の援助を目的として,翌日の訪問にも同意してくれた.
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