映画の時間
―人は斬れども猫は斬れず―猫侍
桜山 豊夫
pp.219
発行日 2014年3月15日
Published Date 2014/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102976
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猫が主役,あるいは準主役を演ずる映画はそう多くはありません.猫に演技を求めるのが犬に比べて難しいからとも言われます.それでもアメリカ映画では『ティファニーで朝食を』でオードリー・ヘプバーンと共演?したキャット,『ハリーとトント』のトントなど印象に残る猫たちもいます.特にディズニー映画では『トマシーナの三つの生命』や『三匹荒野を行く』など猫そのものが主人公であるすばらしい映画がありました.わが国では市川崑監督の『吾輩は猫である』や,犬童一心監督の『グーグーだって猫である』も印象に残ります.今月ご紹介する『猫侍』でも玉之丞という猫が名演を見せます.
時代は幕末の江戸,主人公の斑目久太郎(北村一輝)は剣の達人でありながら,事情があって藩を離れ,現在は妻子を故郷に残したまま長屋での浪人暮らし.仕官もままならず,経済的にも苦しい久太郎のところに,剣の腕を見込まれて暗殺の依頼が持ち込まれます.賭場での八百長騒ぎで,米沢一家の若頭から,対立する相川一家の親分,ではなく親分の可愛がっている猫の玉の丞を斬ってくれとの話です.武士のプライドを傷つけられながらも,報酬に眼がくらんで久太郎は依頼を引き受けますが….
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