連載 水俣病から学ぶ・1
人類の課題「水俣病」―私たちに何ができるか
実川 悠太
1
1NPO法人・水俣フォーラム事務局
pp.53-56
発行日 2003年1月1日
Published Date 2003/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100790
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
環境汚染のシンボル「MINAMATA」
今からちょうど30年程前の1972年6月,スウェーデンの首都ストックホルムで,国連人間環境会議が開かれました.世界中の国々から大統領や首相,関係閣僚が出席して,初めて環境問題について話し合った歴史的な会議で,20年後の92年にはブラジルのリオデジャネイロで,30年後にあたる昨年は南アフリカのヨハネスブルグで,と会議は継続されました.
国連がこの大がかりな国際会議を開催するきっかけになったのは,その10年前に出版されたレイチェル・カーソンの名著『沈黙の春』1)の影響がありました.生物学者である彼女はこの中で,農薬の使用によって鳥のさえずりさえ聞こえなくなってしまった春を,悲しみと怒りを込めて描いています.人間の生産活動が,生物の生存を脅かしていることに人類は初めて気付かされたのでした.確かに,それ以前にもロンドンの大気汚染やさまざまな鉱山被害は問題になっていましたが,それらはいわゆる環境汚染としてはまだ認識されていなかったのです.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.