連載 地方分権による保健医療福祉活動の展開・13
世界の健康政策と健康日本21
川口 雄次
1
1WHO神戸センター
pp.57-61
発行日 2003年1月1日
Published Date 2003/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100791
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「個人の健康」へ向かうべき世界の健康政策
世界のどこで,どのような健康政策を作ろうが,その究極の目標は「個人が健康を享受し,その健康的な状況を死ぬまで続けられること」であるに違いない.この目標を見定めた社会づくりがなされなければ,より健康的な人々のための社会がつくられる方向へとシステム変換することはできない.特に20世紀後半から21世紀初頭の世界の状況を見れば,より顕著になりつつある南北の大きな経済格差と共に,より注目されるべきは「健康格差」である.しかしこの健康格差は単に貧しい国々にだけ存在するのではなく,富める国でも貧しい国でも,その国々の中に同様の格差があり,また表現型も全く違ったものとなる.
現在,富んだ国の悩める健康は肥満であり,とりわけ生活習慣病である.貧しい国では昔ながらの感染症の蔓延であろう.しかし世界が狭くなりつつある今日,これらの単純な構図はもはや終わりに近づきつつあり,例えば米国では西ナイルウイルスによる多数の感染と死亡や,また世界のほぼすべての貧しい国々の都市部を中心に起きている生活習慣病(慢性病)の爆発的な増大は,それぞれが旧来の国単位での政策のみでは,人々の健康を維持・向上させることは不可能であることを示唆している.
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