連載 統合化を模索する国際保健医療政策・5
HIV/AIDS制圧を目指す多角的予防・ケアサポート政策
湯浅 資之
1
,
安田 直史
2
,
中原 俊隆
3
1国立国際医療センター国際医療協力局
2国連児童基金ミャンマー国事務所
3京都大学大学院医学研究科健康政策・国際保健学教室
pp.991-994
発行日 2006年12月1日
Published Date 2006/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100709
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HIV/AIDSほど人類に多くのことをもたらした疾患は,近年稀ではなかろうか(表).HIV/AIDS流行によって,これまで社会の表に姿を現すことのなかった性産業の実態が浮き彫りにされたのを初め,薬物乱用の広がりや同性愛者などマイノリティの人々の私生活も,社会の関心の目に晒されることとなった.世界的に見ればAIDS死亡により平均寿命が低下したり,部族存続の危機に直面している地域もあれば,生産年齢にある人々の健康障害に起因する経済的損失も計り知れない.その一方で医学技術の進歩は目覚しいものがあり,世界規模でHIV/AIDSに対処しようとする国際協調の絆も深まってきた.HIV/AIDSの流行は国際保健医療政策にも様々な影響を与えてきた(表).新しい概念やアプローチが登場して対策の選択肢が増えたからである.
このようにHIV/AIDSの流行は単一疾患のそれにとどまらず,社会的文化的課題をも包含する裾野の広い現象なのである.それゆえHIV/AIDS制圧対策も多元的である必要がある.
本稿は,主として政策統合化の視点からHIV/AIDS制圧の課題を考察してみたい.
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