連載 感染症実地疫学・12
アウトブレイク:院内感染(1) VRE
上野 久美
1
1国立感染症研究所感染症情報センター
pp.967-970
発行日 2006年12月1日
Published Date 2006/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100704
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
医療機関で問題となるアウトブレイクの病原体は数多くあるが,その中でも薬剤耐性菌によるものは,医療現場という特殊な環境において,非常に重大な問題となる可能性が高い.国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(Field Epidemiology Training Program: FETP)では,今まで,いくつかの薬剤耐性菌による院内感染アウトブレイクの調査を経験してきた.2006年10月現在で,最も調査依頼が多かった薬剤耐性菌による院内感染事例は,バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci: VRE)によるものであった.
筆者らは,2004年4月にY県に所在するN病院(223床,精神病床)において,VanB型VREが検出され,病院が行った検便検査で,合計7名のVRE陽性者が確認されたとの連絡を受けた.Y県の要請に基づき,事例の全体像の把握,感染源・感染経路・感染の危険因子の特定,事例のコントロールと再発防止に関した提言を行うことを目的に,Y県と共に実地疫学調査を行った.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.