連載 赤いコートの女―女性ホームレス物語・24・最終回
明日へ
宮下 忠子
1
1「コミュニティワーカー制度を考える会」
pp.648-651
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100631
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「子どもを殺してしまった」と波さんはよく言うようになった.平沢さんにも,「自分は子どもを殺してしまった」と言っている.それが本当のことなのか幻覚によるものなのか,真実はわからない.
男親は自分の子どもに,親としての責任をしっかり取らなければならないという思いを彼女は強く持っている.それ故に今回の女児の出産については,父親のわからない子どもを産んでしまったというやりきれない思いがあり,その現実から逃れたいという気持ちを波さんは隠さない.子育てのできない自分の姿を客観的に見ている.「私には子育てはできない」と言う波さんの真意は,複雑で目を覆いたくなるような現実なのだろう.波さんの理性は常に絶やさない笑顔の下で,揺れ動いていた.
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