同人放談
明日への期待
赤須 文男
1
1金沢大学
pp.641
発行日 1959年7月10日
Published Date 1959/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202005
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先日学会で上京し,数冊の洋書を求めて来たが,外人の著書をよむ度毎に,矢張り外国人は頭が良いと感心させられる。1つの実験データを基盤にして連想を働かせ,推理を動かして1つの仮説めいたものをつくる。それがやがて実験的に証明されていく。とにかく,追試でなくて新生が多いのは否めない。
先日,ある会で,研究を欧文で発表しなくてはいけないと誰かが言ったら,小林教授は「そんなことはないですよ,Originalityの問題ですよ,よいオリジナルなものなら,先方が欧文に飜訳しますよ」と語つた。私が云いたいと思つていたこと,何処かへ書いたことがあるような気のすることを氏は云ったが,まことにその通りである。自然科学に於ける独創的なものは,単なる思いつきや,推察では出来ないもので,長年に亘る経験,概博な知識,自然現象に対する洞察といつたものから産れるものであつて——勿論例外もあるが——これが芸術的なものとの大きな異いではないかと思う。ストレプトマイシンの発見,ペーパークロマトグラフィーの案出など,結果からみれば何でもないことであるけれどもこのOriginalな活性はまことに高く評価されてもよいと思う。
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