巻頭言
明日へ期待すること
増田 善昭
1
1千葉大学医学部第三内科
pp.521
発行日 1994年6月15日
Published Date 1994/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900873
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十数年前,サンフランシスコのカルフォルニア大,Cardiovascular Research Instituteに留学する機会を得た.この研究所は若い頃熱読した名著「The Lung」の著者であるComroeが設立したもので,呼吸と循環系の研究については全米指折りの業績を持つ研究所である.当時,Comroeはすでに引退し第一線を離れていたが,氏の目指した研究方針はそのまま残っており,基礎と臨床研究が組合わされた自由な雰囲気があふれていた.例えば,当時大学内の地下工場でまったく企業の力を借りず超高速CTのプロトタイプの装置が作成されていたのにはびっくりした.
ここで私が教えられたのは純粋に知識のみをもとめて行う研究も臨床応用と同様に大切であるということであり,また,すべての研究は過去のいろいろな研究や技術の恩恵を受けているということである.古い例で恐縮であるが,レントゲンのX線の発見を例にとろう.1985年,レントゲンは陰極線の研究の途中で真空管から出た未知の光線によりシアン化白金バリウムを塗った紙が光ることを認め,これをX線と名付けた.本来この研究は医学への応用を考え行われたものではないし,その発見も偶然のきっかけによるといわれる.
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