連載 インタビュー・住民VOICE・11
感染者の相互支援とデイケアセンターがHIV/AIDSケアの中核
ボンコット・プランスワン
1
,
藤田 雅美
2,3
1タイ・チュン病院
2WHO西太平洋事務局
3日本健康福祉政策学会
pp.146-147
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100572
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藤田 ボンコットさんは,深刻なエイズ禍に見舞われているタイ北部パヤオ県チュン病院で総看護師長をされています.エイズ患者数が病床数を大きく上回り,地域医療が機能しないのではないかと言われた時期もありましたが,エイズの状況は最近では好転していると聞いています.このような困難を,どのように乗り越えて来たのでしょうか.
ボンコット パヤオ県では,1990年代前半,一般妊婦のHIV感染率が10%を越え,20~40歳代の人たちがバタバタと亡くなっていたにもかかわらず,病院スタッフも家族も,エイズ患者を看たがらなかった時期がありました.病院長と私たちは,病院と地域でエイズの正しい知識を広めながら,お互いの不安や疑問を出し合い話し合うことから始めました.エイズのことを気軽に話せる雰囲気ができましたが,差別・偏見,患者のケアなどの問題は,すぐには解決しませんでした.
1996年に,エイズ患者であふれる病棟の負担を軽くするために,国のパイロット事業で病院内にHIV/AIDS感染者のデイケアセンターを設置しました.村の拡声器などで宣伝をし,来てくれた感染者に交通費を出し,基本的なケアと教育,食事や薬の無料提供を行いました.今思えば,感染者の人たちを赤ん坊のように扱っていたように思います.国からの補助は1年で終わったため,デイケアセンター活動も存続できないと考えていました.数人の感染者が「私たちがセンターの運営や患者ケアを手伝いますので,デイケアセンターを続けてください」と申し出てから,地域も病院も大きく変わり始めました.
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